ニセコの森の中に、小さな和菓子工房があるのをご存知ですか。【松風】さんといって、工房に和菓子が並ぶのは1ヶ月1~2日程度で、和菓子教室も同じく1ヶ月に1~2度という、ささやかなお店兼工房です。個人的に私は、このお店のこと、講師の渡辺さんのことは雑誌等でお目にかかったことがあり、ずっと気になっていました。この度、7月の教室、【ういろう生地を使った和菓子】のお教室が開かれると聞き、早速予約をして参加してきました。
京都出身の私は、周りにたくさんの和菓子のある環境に育ちましたが、自分の手で作った経験はなかったので、とてもゆったりとした時間と環境の中で楽しく体験できたので、皆さんにもその様子をシェアしたいと思います。
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松風さんは、ローカルの方でも、一瞬迷ってしまうような場所にありますが、渡辺さんの【ことばの地図】通りに行くと必ずたどり着けます。こんな素敵なささやかな看板があります。
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白樺と緑のまぶしい庭の横に入り口があります。この木の看板も趣をもって出迎えてくれているようです。
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工房の中の様子。大きな窓からは外の緑がまぶしく映ります。ゆっくりとした時間の流れる、木のぬくもりがやさしい工房です。
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講師の渡辺麻里さん。渡辺さんは講師だけでなく、執筆、イベント、個展、販売、といろんな分野で活躍されている和菓子職人です。人柄も、生み出される和菓子のように、やさしく、丁寧で、芯がありながらも、とてもはかない雰囲気の方です。工房もとてもおしゃれで、まるで雑誌の紙面を切り取ったような、こだわりを感じるつくりになっています。どこかしこに「丁寧さ」が散らばっていて、どこを切り取っても絵になる、そんな工房です。
この日の和菓子教室は、【ういろう生地を使った和菓子 「清流」】ということで、まず一番最初に、ういろう生地となる、上新粉、白玉粉、片栗粉、上白糖を混ぜ合わせて30分蒸し器で蒸すところから始まります。蒸し終わったかどうかは写真のように、中をチェックし、透明になっていれば、それで蒸しあがり。熱いうちに布巾を使ってよくもみこみます。お餅を一人でつくように。
【清流】というネーミング。夏の涼しさをイメージするように、この日は青色の食用色素を使ってういろうに彩りと涼しさを与えます。食用色素は、本当に色が濃くつくので、ほんの少しをなじませるだけでも素敵なのですが、色をあえて濃くして仕上がりに個性を出すこともできます。今回は、小さくちぎって水玉模様にしてみます。
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めん棒を使って引き伸ばしたういろう生地に、このようにちぎった色素入りのういろうを面積の半分に乗せていきます。それを折り畳み、まためん棒で伸ばす。そうすることによって、ブルーの発色がきれいなぼかし水色に変わります。食べるのがもったいなくなる、そんな蝋でできたようなビジュアルに、生徒さんから、わあっ!と歓声が上がります。
半分に折ってめん棒で伸ばし、均等に切り分けたところ。とてもきれいでかわいいういろうになってます。この時点でもう、大方完成です。あとは白餡をこの涼しげなういろうで包み込むだけ。
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ただ、ここに行き着くまでに、初めての方は、うまくめん棒で引き伸ばせなかったり、厚みに違いが出てしまったり、ただまっすぐに切るだけでが斜めに切ってしまったりと、なかなか先生がやるように、うまくいかないものです。体験してみて、鮮やかに、正確に、てきぱきと進める先生の様子を見ていて、初めてそのすごさを知る。そんな体験でした。
白餡が涼しげなういろうにそっと包み込まれました。この、なんともいえない和ならではの憂いとはかなさを併せ持った美しさ。和菓子は目で見ても楽しめ、口に入れても楽しめる、まさに究極のお菓子。作り手の気持ちや性格が反映され、同じ材料を使って同じ工程で作っても、仕上がりに大きな違いが出る。
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教室では、箱詰めまでがひとつの工程。美しい和菓子を丁寧に透明パックに入れ、青紅葉で彩を添える。
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半紙にスタンプを押したものでも、こんなに素敵な包み紙に。気持ちのこもったおもてなし、という姿勢を学べた気がします。箱を開けてくれる人の笑顔、ふたを開けたときの驚く顔、口にそっと入れてくれるときの表情、その全部を想いながら作る和菓子。自分で手作りした【手みやげ】って、作り手のそんな全部の気持ちを詰めるからこそ、喜ばれる最高のコミュニケーションの手段なのだと感じました。おもてなしに対する姿勢、何かを想いながら手作りするその工程すべてがコミュニケーションなのだと気づかされたとても意義のある時間でした。
「丁寧に」暮らしに彩を添えるという、その日常では忘れてしまいそうな時間を取り戻せる素敵な教室です。ニセコの工房では、最大6人での教室となります。少人数で、ゆっくりと、自分とも向き合える時間でもありますので、お近くの方、もしくはタイミングのあう方は、ぜひ、一度、参加されてみればいいと思います。予約が取れればラッキー、というほど数少ない教室ですので、予定を先取りして、カレンダーにマークをつけてみてはいかがでしょうか。
ちなみに今後のニセコ工房での教室は、9月29日30日のうさぎのおまんじゅう、10月の20日21日亥の子もち、11月3日4日の芋を使った和菓子、12月22日23に日のはなびらもち、の日程になっています。
8月9月には和菓子屋さんの日として、工房においしい和菓子が並ぶ日もあります。(8/29~30、9/26~27、それぞれ13時~17時)一度、丁寧に作られた渡辺さんの和菓子を手にとってみてください。
【ニセコ 松風】
044-0081 虻田郡倶知安町字山田105-20
0136-22-6890
ホームページ:matsukaze.upas.jp