木ギャラリーでの初個展『モーメント』の創作の道のりとインスピレーションを探るこのインタビューでNashyの世界観の魅力にせまります。作者Nashyの言葉を受け取り、ゆっくりと立ち止まり、その”瞬間”を肌で感じてみると作品と共に新たな感情を共有できるかもしれません。
インスピレーション、テーマ、創作過程
展覧会のテーマである「モーメント」は何がきっかけとなり生まれたテーマですか?
ニセコで過ごす、なんてことない日常で出くわすあれこれがインスピレーションとなっています。それは滑りに行ったり、近所を散歩してみたり、ひたすら除雪を頑張ったり...。厳しい冬は、少し出かけるのにもとにかく時間がかかる。でもスローダウンさせられることで、見えてきた景色がたくさんありました。
この展示会の作品は、どのようなプロセスで創作されたか教えてください?
作品の多くはNashyが実際にニセコで出会ったシーンから着想を得ています。仕事柄、家にこもることが多いので出不精になることも多いですが、まずは外に出かけたり散歩をしたり、滑りに行ったりします。スーパーマーケットやちょっとコンビニに出向く時でも心をオープンにして、アンテナを立てながら世の中を見ています。そうすると思いもよらないところからアイデアが降って出てくることもあります。
この展覧会のために、こだわった技法や用いた道具はありますか?
作画はほぼiPad一台で行っています。デジタルながらも、手摺りの版画のようなあたたかみが出るように、ラインはあえてぐらぐらさせたり、質感のあるレイヤーを入れたりしています。
芸術家としての冒険の道のり
ニセコの木ギャラリーで作品を展示することになったきっかけは何ですか?
以前マーケティング部にいらっしゃった三宅さんからお声がけいただきました。とってもチャーミングな方で、一緒に働けたら楽しいだろうなと思ったので二つ返事で参加の旨を伝えたのです。後に、Kiギャラリーがニセコのレジェンド画家である徳丸滋さんを含む素晴らしいアーティストたちをホストしてきたことがわかりました。私の個人的なヒーローでありメンターでもある彼の足跡をたどる機会には胸が躍りました。さらに徳さんが展示会に足を運んでくださると言ってくださったので、今の私ができるベストを尽くしたいと思いました。そういうわけで、この数ヶ月は展示会の準備でバタバタと駆け抜けるように過ぎて行きましたが、無事にこれが実現でき、感謝の気持ちでいっぱいです。
芸術家としてのこれまでの冒険は、どのうような道のりでしたか?またどのようにこの展覧会に至ったかを教えていただけますか?
山登り、と言っても、林の中を淡々と歩いて行くような感覚です。とにかく目の前の地道な一歩に集中。気がついたら山の中腹まで来て少し景色が開けたなという感じ。そこで上述した三宅さんと出会いました。
あなたの芸術スタイルやテクニックに大きな影響を与えたものはありますか?
上述したニセコの画家・徳丸滋さんとの出会いです。ニセコの花鳥風月をのびのびと描く徳さん。絵だけではなく、気さくで優しいお人柄も大好きでよく遊びに行っています。徳さんは「どれだけいい絵を描いても、人が良くなかったらその人の絵は買わない」ということや「絵は結局一対一の対話であり、たとえその絵を大勢の人が欲しがらなくても、ひとりに訴えかけられたらいい」ということを教えてくれました。本当にその通りだなと思います。絵も徳もまだまだ途上段階の私ですが、徳さんが北極星のような存在になって導いてくれている気がします。彼のように生涯現役を目指して長期的な視点でこの旅路を楽しみたいと思っています。
物語と感情
展覧会を通して、鑑賞者にどのような感情やメッセージを受け取ってほしいですか?
すこし立ち止まって、ひと呼吸して、このモーメントを一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。
あなたの作品を通して呼び起こしたい感情や反応はありますか?
子どもの頃に、きっと誰しもが感じていたような、長い長い時間の感覚です。
木ギャラリーでの初個展
このコレクションの中でお気に入りの作品はありますか?もしあれば、あなたにとって特別な理由は何ですか?
「Just Another Day in Hirafu」です。あの作中に登場する子ねこたちが、当時忙しく過ごしていた私を強制的にでもスローダウンさせてくれました。「Time to Enjoy the View」も同じような理由で気に入っています。立ち止まってその瞬間を楽しむ重要さに気が付かせてくれた大切なエッセンスが詰まっています。
この展覧会で観賞者が作品とどのように対話することを想定していますか?
きっと誰の中にもいるであろう「子ども時代のあなた」みたいな部分に話しかけられたら嬉しいです。
この展示会の作品を制作する際に直面したチャレンジは何でしたか?
初の個展だからこそ、自分自身に対する葛藤がありました。凝った技法だったり、少し奇異であったり。世間から求められるいわゆる「アーティストらしさ」みたいなところが、iPad一台の一般人である私には欠けている。そんななか「アイデアさえよければ、それをどんな技法で表現しようが価値はある。」そう言ってくれた夫に支えられ、前を向いて挑戦することができました。
逆に、この展覧会を実現する上で最もやりがいを感じたことは何ですか?
フリーランスという孤独なワーキングスタイルだからこそ、たくさんの方と関わりながら展示を実現できたことはとても楽しく嬉しかったです。木ニセコの様々な部署の方々、いつもお世話になっているパートナーの方々、家族はもちろん、友人までもがこの展示を実現させるために、家のことや子守りなどを買って出てくれ、プロジェクトに専念させてくれました。皆さんににたくさん迷惑をかけました。反省と感謝で頭が上がりません。大切なモーメントだらけです。